川の水が甘いと、言い始めたのは誰だっただろうか。それは人間の感覚としては余りに的確すぎ、それゆえに人間の言葉ではないようにさえ思える。
酒を好む人間は確かに水を嗜むとも言う。酒を好む妖怪は水の甘苦、硬軟にこだわるという。そういう意味で優れた水を見出さんとする者は少なからず居る。
だが、それは本質ではない。川の水を甘いと表現するに本当の権を持つ者は、川に棲む者達に他ならない。
甘い水、の本質を知る者。
それは魚、それは鳥。それは草花。そしてそれは、蟲。
今宵も、それを喚ぶ子等の童歌の声が、河辺に響く。
おおい、そっちにはいないだろ、こっちに来いよ
清水せせらぐ川縁で、一人と四人の子供達。
ほっとけって。異人の子は。
そうよ。あの子がいると、良くない妖怪が悪戯にやってきて困るって、母さんがゆってた。
片や四名程が連れ立って、浴衣に草履、団扇の出で立ちで河辺で戯れている。黄色に近い肌、黒い髪。
片や一人ぼっちでその四人とは少し離れた場所に居る。やはり浴衣に団扇、草履であるのに変わりはないが、白い肌、黄色に近い髪。
そんなこといっても、寺子屋仲間じゃんか。妖怪の子ってなんて、ただの噂だしよ
でもあの子、お父さんもお母さんも居ないのよ?何処からともなく里にやってきて、一人で暮らしてるなんて、変だわ
四人のうち一人だけは件の白い娘を気にしているが、他はそれを忌避さえしている様子。幾らかの言葉を交わす内に、その一人も、空気に抗えずに口を噤んでしまった。
登川
岩陰を堺に二手に分かれている一人と四人。三人に―それは既に一つの社会―に抗えず声を殺した少年が、最後に彼女を呼んだ。
岩の向こうで、少女が振り返る。だがその目は。
沈んでいた。濁っていた。光を失い闇を宿していた。絶望と落胆に塗り染められた瞳は、元来綺麗であろう褐色の瞳をどんよりと鈍らせていた。
私に構うと、私と同じになるよ
そう一言だけ言い残し、遠くへと消えてゆく。提灯の光がゆら、ゆら、と川の上流へと揺らいで登ってゆく様は、まるで……。
おおい、こっちにいっぱいいるぜ
その光に誘われずその場に残った少年は、此方の声に呼び戻された。はた、と気が付いたように後ろを振り返り、声の方へ―人がいるべき社会の方へ―戻ってゆく。
かくして少女は一人、里を去りぬ。夜の川を上り、夜の山を登り、人の手届かぬ、あやかしの地へ。
煩わしい。どうせ私の事を人間とさえ思っていないのだ。毎日毎日ガイジンという言葉にちくちくと刺されながら、確かに私は『ここではないどこか』にいたのだ。
学校、今通っている寺子屋と似たような性質で、もっと巨大な施設だった。そこに通っていた自分を、確かに覚えている。
その毎日が嫌で。嫌で、嫌で、嫌で嫌で嫌で嫌で。溜まらなくて。それでもそれを願う以上のことも出来ずに陰鬱と時を過ごしていた。
肌の色が何だ。髪の色が何だ。瞳の色が何だ。母親が じゃないからって、一体なんだというのだ。
どこかへ行きたいと強く願っていた。そうでなければ、どこかへ消えてしまいたいと。そこに『自分』がいなくても、最早それは些細なことだった。私が私としてそこにいることそれ自体が苦痛だったのだ。私が私を認識できない何か別の存在に成り果てるのであっても、それで構わなかった。
そうであれば、心は痛くないから。
そうであるから、ここには居たくない。
そうしたらどうだろうか。気が付けば見知らぬ土地に一人。まるで時代錯誤の中。テレビも、車も、それどころか電気もない。時代物のテレビ番組でしか見たことのない、どこか別の場所にいた。
それでも私の心は晴れなかった。当たり前だ。
私が居たのだから。
姿は何故か、十歳ほど若返っている。記憶の一部が擦り切れた紙の様に消えている。
あまつさえ、この腐った水のような封建的な集落は、以前私が居た場所よりも酷いではないか。露骨にこの肌の色を指差し、髪の色を呪い、この身一つで突然現れた私を化け物のように扱う。
結局、何処にいてもそうなのだ。結局、いつまで経ってもそうなのだ。私という存在はいつでも、掃き捨てられて顧みられぬ存在。
別にそれを自ら憐れむつもりもない。誰かにどうして欲しいとも最早思っていない。ただ、命を絶つ勇気だけを持てずにいて、だからこそ憐れを通り越して、愚かで、そして滑稽ですらあった。
目を瞑ってさえ居れば、物腰の割にうら若く、熟れた果実だったのだろう、奴らにとって。人知れぬ場所で、何故か幼く生まれ変わった肉を売っては、私は日銭を稼いでいた。最初は苦痛だったがもう慣れた。汚辱に塗れて涙でそれを濯ぐのにも飽きた。
人に言えぬ金とは、案外に綺麗なもので。それがどうして得られた金かわかっているからこそ、だからこそ誰もが口を噤む。見た目の年齢に見合わぬ大金を、何ら咎められることなく好きなように使えるのだ。夜の客が、その相手であれば。
里の習わしとしては、私の年齢の者は寺子屋に行くのだという。どうせ忌避して傍に寄っても欲しくないであろう私をそのように誘うのは、嫌な匂いのする女教師だった。
向こうの世界に居たときから、この『匂い』は非日常の兆候で、この匂いを漂わせている人間は必ず人間でありながら人間ではない何かだった。厄をもたらしたり、益を知らせたり。幼かった頃はそれをひけらかしていたが、次第に、それを見せると汚らしい人間しか傍に寄らないことに気づいてそれもやめた。
嫌な匂いのする女教師の名は、慧音というらしい。
今日からここが、君の学び舎だ。ええと
登川ニーナです
ニーナか。いい名だな。
ただそう一言言って、寺子屋で必要なものや、衣服などを一式くれた。ただ、その名は私のものではないような気がした。どこかで、なにかと、交換したもののような、気がする。
貴方、人間じゃないでしょう。どうやってこの里になじんだの?
私にだけ出来る、卑怯なやり方だよ。
少しだけ自嘲を含ませた声でそういう彼女に、私は少しだけ共感した。彼女も、ここではそういった存在で、何らかの方法を使って無理やりに溶け込んでいるのだ。
子供というのは教師の言うことを都合よく受け入れ、都合よく聞き流すのが得意な生き物だ。私もそうだ。そして無邪気で無知故に、酷く残酷。私も、きっとそうなのだろう。
先生一人が私を分け隔てずに扱っても、親が、里が、社会が、それを更に包み込む空気を作り、言外に村八分は続いた。私の気分は、やはりさほど変わりなく、どこかへ行きたいという願いが中途半端に叶ったこの現実を、余計に恨んだ。
高瀬舟、といっただろうか。自殺しようとして首を掻っ切ったが死に切れなかった男の話は。止めを刺してくれる誰かは、現れるのだろうか。もし現れるとして、あれと同じ苦悩を人に与えると思うとそれも身勝手な話だ。
いっそ歴史から消えてしまいたい
いつかそう漏らした私に対して、先生は何かを言いかけたが、結局言葉を呑んで押し黙った。
彼女は私に何を言いたかったのだろう。
この村で『稀人』として、しかし一切の福も運んでこなかった私を守るだけの何かは、この里の何処を探しても無かった。幾らかいた、理解のある元いた側の学校の教師達がそうだったように、慧音にもまた、私の存在を守りきるほどの声はないようだった。
私がここにきてもう少しで一月が経とうと言う頃。寺子屋の子供達が蛍狩りに行くというので、私もそれに連れだった。行きたくなかったといえば行きたくなかったのだが、何かに呼ばれているような、そんな気がして。
この感じは、そう。向こうからこっちに突然連れてこられた日の前数日と同じ。声が聞えるのでもない。何があるとわかっているわけでもない。ただ、何故か無性に『呼ばれている気がする』のだ。
耳の裏に声にならない声が響いてぞわぞわし、背筋に何かが這っているような感触が消えない。視界の隅に常にこっちを見ている誰かが居るような気がして、時折足が何かに掴まれる。
そっちへ。そっちへいけ。
こっちへ。こっちへこい。
どこかへ。どこかへ。どこかへ。どこかへ。
それは理性の膜を浸透圧でじわりじわりと抜けていくように、理由のない走行性を植えつけてくるのだ。
月が綺麗な夜だった。明日明後日にも満月だろう。少しだけ欠けた月が空で威容を放っている。この世界の月は、とても存在感がある。前に見ていたものよりも一回りも二回りも大きく、その分輝いていた。そして赤い。
今宵は空気も澄んで程よく乾燥し、蛍狩りには向いていないはずだったのだが。
登川
私の名を呼ぶ声が聞えたので振り返る。朴訥な少年がいた。寺子屋の中で、素直に先生の言うことに従って、私を平等に扱おうとしている唯一の同窓。
一緒に、いこう
笑ってしまう。
それは彼本人の紛れもない本心なのかもしれない。その素直さと優しさが、彼の本質であるのに間違いは無いのかもしれない。それでも、彼の中に見える『恐れ』。私と同じく社会からはじき出されることへの恐怖。
彼は傍で見てきたのだ、私がどういう風に扱われているのか。それを止めることは彼には出来ない。仕方が無いのだ、第三項とはそういうものだから。福をもたらさない稀人は、ただの疫病神なのだから。そして、彼も社会の一員で、そこからはみ出さないことが、生きていくコツなのだ。群成す生き物は、本能的にそれを知っている。私も同じ立場なら、同じようにする。
一人でいいわ
そう。一人でいい。私のような者は、一人でいるのが相応しく、一人いれば十分なのだ。
私は彼に背を向け、一人で河辺を歩いた。それは人と一緒に居ることの煩わしさもある。少し自惚れるのであれば、私に触れることで一緒に省かれることを防いだのもある。だが、それ以上に。
私に構うと、私と同じになるよ
既に私の理性はぐずぐずに崩れ始めていた。彼方からの雄叫びが、深淵の死霊が、新緑の魔力が、不安定性突然変異を来たした私を精神錯乱させる。
この川のどこかに、私を呼ぶ何かがいる。
紙の筒で光の出口に指向性を持たせた提灯をぶら下げたまま、私はふらふらと川の上流へ向かってゆく。
背後には、私に気をかけていた少年が、社会に帰化して行く最後の音が聞えた。
ここは異世界か。
小川の囁く音、風の踊る音、月影が降り注ぐ音、星が揺らめく音。静かな不協和音が真黒い闇にべたべたと色を塗りたくっていた。
耳で囁く声は、背を撫でる感触は、視界の隅で私を見つめる者は、私の足を引く手は、より存在感を増している。
視界に広がるのは、一面の蛍舞。
ふふ、この川の水は、甘いのね
私以外に、そこに人はいない。だが、こんなにもそれはいる。
私の背後で私の肩に手を伸ばそうとしているのだ。私の頭の上でいつ私に飛びかかろうか待ち構えているのだ。私の足元で掴んだ足を引きずり込もうとしているのだ。私の目の前で歪な世界を見せ付けているのだ。私の中で私を内側から食い破ろうとしているのだ。
蛍の光は、私が現れたことで急激にその数を増やしていた。
異常だ。
この数は異常だ。
至る所にびっしりと蛍の黄緑色の光がこびりついている。天まで昇る光の嵐は、月影も星の煌きも掻き消してしまった。
黄緑色の光の世界に包まれて、私の体は弛緩し、崩れ落ちる。地面に落ちた提灯の炎さえ、蛍は覆い尽くして消してしまっている。その場にへたり込んでいる私の足に腕に肩に背に頭に顔に、冷たい光が降り積もり、私を覆い尽くしてゆく。それは凍死した死者に降り積もってゆく残酷な雪のように。
そうか、私を呼んでいたのは、この蛍達。
蛍を追って子供達が歌う童歌を思い出した。
蛍は甘い水を好むというのを、馬鹿馬鹿しく感じられた時期もあった。だが、今この瞬間にあっては、この川の水は確かに甘そうでさえある。おどろおどろしいほどに綺麗で、岩に絡みつくような妖しさがある。
ざり、ざり、ざり。
耳障りな音が聞える。何の音だろう。今の私はこんなにも幸せなのに。
これできっと消えられるのだ。本当に、私ではなくなれるんだ。どこにもいなくなれるのだ。何でもなくなれるのだ。
ああ、なんて幸せ。苦しみも痛みも悩みも何も無いことが、こんなにも気持ちのいいものだなんて。
ざり、ざり、ざり。
それにしてもこの音は何だろう。折角幸せな気分なのに、この音だけ不快だ。それでも、この体中を包み込むふわふわしたあたたかい、ゆったりしたここちよさにくらべれば、それもささいなことだ。なにもきにならない。とてもしあわせ。そうだわ、わたしはここでこうしてきえるためにうまれてきたのだそれならばそれならばなんて
慧音は焦りを隠せなかった。子供達五人が未だに帰らぬという事実と、それに直結しそうなもう一つの事実を、薄々と感じていたからだ。
どこだ……どこにいる
人目を避け、妖怪としての力を発現させて五人を探す慧音だが、その姿は見つからない。
一度でも満月の夜を中継していれば、歴史として取り込んだ情報から幾らか行動を帰納できそうだが、登川ニーナが訪れてから初めての満月は、恐らく明日。彼女が明かさぬことについては、一切知る手段が無かった。
くそっ、こんな蛍に不向きな夜に捕食を始めるなんて。今までと、行動アルゴリズムが違う……
川沿いを全て舐め、川上から川下まで全てを見るが、五人はいない。もっと他の場所にいるか、もしくは既に、連れて行かれたか。
探す宛を失った慧音は、山の中を虱潰しに歩きながら、一人呟く。
近いのか、羽化が……
誰かが呼ぶ声がする。
ぬるま湯のような心地の良い感覚の中で気が付くと、たくさんのそれが私を取り囲んでいた。
あ、あなたは
ようこそ。ボクは、この幻視の夜を統べる者。見ての通り蛍の怪異。
私の問いかけに答えたのは、私と同じくらいの少女。いや、少年?緑色の短い髪の毛にあどけなさを残した可愛らしい子だ。鬢の上辺りから、触覚のようなものがぴょんと跳ねている。
それとは別の子が、彼に続くように言葉を紡ぐ。
私達は個にして全、全にして個。故に認識下客体としての名はありません。但し、私達以外の者達は、私達のありとあらゆる活動全てを人格化して、リグル、と呼んでいるようです。
リグル。
私はその言葉を頭の中で反芻する。
リグル。
リグル。
リグル、リグル、
リグル、リグル、リグル、
リ リ リ リ
リグルリグルリグルリグルリ
グルリグルリグルリグルリグ
ルリグルリグルリグルリグル
リグルリグルリグルリグルリ
グルリグルリグルリグルリグ
ル ル ル ル ル、
リグル。
「り」「ぐ」「る」の言葉のゲシュタルトが崩壊したその隙間。「り」と「ぐ」と「る」の文字の間から黄緑色の光を零す、だというのに黒く沈む重い粘土のような何かが、どろりと染み出してくる。
この不定形で鈍く流動する、だが、ともすれば認識さえ出来ないこの『どろどろと地面に広がってゆく何か』が、彼等全員の足元に広がる存在根。それによる、夜の怪異。
これが、リグル・ナイトバグ、か。
怪異を嗅ぎつける私の鼻は、それがひん曲がりそうな程に甘美な匂いを、感じていた。
貴方は私達の呼びかけに答えて来てくれた。私達の宴に、貴方は招待されたのよ
背後の彼女が答えた。同じ緑色の髪を今度は長く腰まで伸ばした、スタイルの良い女性。
気が付くと私の腕にしなだれてきていたのは、やはり緑色の髪の毛を散切りにした少年。
貴方は
選ばれた
我々蛍の饗宴に
貴方は
誘われた
我々蛍の楽園に
貴方は
もう
帰れない
声がする方を見ると、それはそう言われれば、確かに蛍なのだ。
緑色の髪の毛とそこからぴょこんと出た触覚らしきもの以外に全く共通点の無い
男。
女。
どちらかわからないもの。
子供。
大人。
それらのあいだのもの。
無数に。
だが、ひとつ。
それら全てが蛍だと、私にはわかる。先の黄緑の光全てが、今目の前にいる、彼等彼女等なのだ。
そしてその全てが、リグル・ナイトバグの多義性であり、同時に複数のシニフィアンなのだ。
壊れている。
さっき見た蛍光の海は、浴びるだけで人の精神を崩壊させるほどの力を持っていたに違いない。私はもう、ものをまともに認識する力を失っているのだ。いや、あの『聲』が聞えていた時点で、私はこの世界よりももっと混沌としたどこかへ誘われていたのだろう。
だが、もう、元いた場所に、今いる場所に、微塵の未練も何も無い。
お誘いいただき有難う。私はもう帰るつもりなんてないわ。だからこそ、ここへ来たのだから。
私の答えに、蛍達は全員が満面の笑みで私を迎え入れてくれた。彼に彼等に彼女に彼女等に、私は優しく抱擁される。
愛おしい。
皆が愛おしい。
こんなに暖かい場所は、今までに無かった。
それに、私を求めてくれているのがわかる。
私は傍にいる一人の顔に自分の顔を寄せ、その唇に自分のそれを重ねた。彼もそれに応えて、顔を寄せてくれた。
甘い。なんて甘い。
蛍が好む甘い水とは、これほどに甘いものなのか。
口から伝わる甘美な感触は、味覚に留まらず、首筋と眉間を直線で結んだ真ん中あたりを直接くすぐるような気持ちよさを生み出して焼き付けてくる。
麻薬。気付いたら既に遅い。それは唇からだけではない。彼に、彼女に、触れられているすべての場所から、快楽の水のようなものが、だくだくと注ぎ込まれていた。水飴を直接血管に流し込まれたような、べったりと甘い快感が、体中を這い回っている。
感じる?私達を
かん、じるわ。切ないのに、とても心地がよいの。貴方達に触れられるだけで、凄く、あつく、なっちゃう
よかった。じゃあ楽しんでいって、ボク達の幻夜を。
少年の姿をした蛍に耳元で囁かれると、お腹の下がきゅっと鳴り、同時に凄くリラックスして弛緩した。
気持ちよく、なろ?
私と同じくらいの彼女が、私の横に寄り添って唇を重ねてきた。左手は私の胸を触り、右手は優しく頭を撫でてくる。
んっ
触れられるだけで、体がびくびくと震えてしまう。
す、ご、ぉっ
イく寸前まで昂ぶった状態の、張り詰めたクリトリスに触れたときみたいだ。体のどこを触れられても、高温の真鍮の刃を快楽神経に突き刺されたようで、そしてそれは突き刺さったまま更に熱を上げてどろどろに熔けて広がってゆく。
幼い顔つきで、髪の毛をツインテールに結わえた一人が私の股の間に手を差し入れてきた。
お姉さん、ここが好きなんだ?
だ、だめ、今の状態でそんなところ触られたら!
触られたらどうなっちゃう?
おかっぱのリグルが私の腕を、ロングヘアのリグルが私の脚を押さえつけている。股ぐらに体を割り入れているリグルは、少女の声色に強気な口調で私を責め立ててくる。足を絡め取られて身じろぎ程度しかできなくなっていた私には、その腕から逃げる術などない。逃げられない私の股間に侵入させた手の指は、真っ直ぐにそこへ向かった。
ふふっ、ぱっつんぱっつんに張り詰めてるね。素敵でしょう、ここ?
ひ?あっ、あああああああ!?
軽く触られただけだった。指の腹がそっと触れただけだったというのに、体を縦に割られるような強烈な快感が突き抜けた。
触れられたのはクリトリス。全身がそれ位に鋭敏化していたのだ。ならそこはと言えば想像に難くない。
お姉さん、すっごい。ちょっと触っただけでこんな反応なんて。そんなんじゃ、これから先、十分に楽しめないよ?
その一撃だけで、私の股間はすっかり口を広げ、蜜を滴らせて準備を完了してしまう。
その沸き出した淫液を指先で掬って、彼女はそれを口に運んだ。
や、そんな
ん……うん、甘くておいしい。お姉さんみたいな人のって、とっても甘くて、大好き
私みたいな人、とは何をさすのだろうか。と、下らない疑問が一瞬浮かんだが、それを知ったところで私が幸せになれるとも思えなかった。どうせ。
ツインテールのリグルは私が羞恥に顔を背ける様か、それとも私の淫蜜の味かのどちらかに対して満足そうに笑い、そして他のリグルを呼び寄せる。ほとんど真っ直ぐに開かれた私の股間めがけて、眼鏡をかけた少年の姿のリグル、ショートボブの少女の姿のリグルが現れて、あわせた三名で私のとろけきった股間に視線を注いでいる。
いいものあげるね
少年のリグルが、口にたくさん含んだ唾液を掌へ注ぎ、それを私の股間へ、クリトリスを重点的に、塗りたくってゆく。僅かな刺激だけでも爆発的な悦楽を感じる私は、そんな愛撫を受けてしまえば、ひとたまりもなかった。
ひ、ああああああああっ!だめ、とぶ、すぐとんぢゃ、ひいいいいいいん!
瞬く間に絶頂に打ち上げられて、体が強ばり、そして弛緩する。びくびくと小刻みな痙攣が続く体を、しかしリグル達は離してくれそうにない。
いい感じに出来上がってますね
私達が搾るのもよいのだけれど
もっと甘い水、のみたいなっ
私の股間を広げるように三人が、一度絶頂してユルんだヴァギナに息を吹きかけたり、指先で軽くつついたり、ただ視線を投げかけたりしている。熱源を埋め込まれた私のそこは、そんなことだけでも簡単に発熱して、発情してしまう。
いきっ、いきかけられるだけで、かんじぅっ
目眩を催すほどの燻り焦れる快感が、水面に水滴が落ちて波紋が及ぶように、淫裂の辺りを中心に広がって行く。
そして、その中心に、なにか異質なものが生まれていることに、気付いた。
より強い刺激を求めるカラダ。性欲とか情欲とか劣情とか、そういうんじゃない。気持ちとは完全に切り離された、肉体的な生理現象としての欲求。
むずむずする。まんこ全体が刺激を求めて粟立ち震え熱くなっている。触れたい、触れたい、触れたい。そんなそっとした刺激じゃなくて強く、強く、いや酷く。思い切り、股間を……!
私を今包み込んでいるその感覚。それは。
おまんこ、どうしたい?
この感覚を言葉に直そうとする。
探索、構築、整理、瓦解。上手く行かない。言葉に直そうとする側から牝裂から生み出されるそれの波自身によって吹き飛ばされる。言語化できない。
いいじゃない、ただおまんこしたいの。もうとろとろになっちゃってるここに触りたい、触って欲しい。柔らかいのじゃなくて、強いに、鋭いのが欲しい!
わかん、にゃ
視線をふらつかせながら漏らすようにそう言った私の様子を見て、私の腕を押さえつけていたリグルがそれを解く。
いいよ、お姉さんの好きなように
彼のその言葉を待たずに、私の手は真っ先にクリトリスへ向かい、人差し指の腹で押し込むようにそれを弄くった。
あっ、ん!これ、これえっ!!
快感とともに押し寄せるのは、安堵だった。触れたくて触れたくて、刺激が欲しく欲しくてたまらなかったそこへ、自分の手で好きなだけ刺激を与えられる快感と安堵感。
破裂しそうな波と静かな揺らぎが混在して巻き上がる、未分化な感覚。まだ言語化できずにいるその感覚を、私はしかし、確かに知っていた。
指の腹で押し潰すだけでは物足りず、親指と人差し指で摘み上げ、そのまま紙縒りを作るようにこね回すと、火花が散った。火花は外気に触れると液化して、少し白っぽい粘り気のある汁になって噴出し、股の間でそれを待つリグルの顔へと降り注ぐ。
あっ!ひん……っ!!ぉぁぁ
舌を、喉の奥の根元から吐き出してしまいそうなほどに伸ばす。肺の奥にその快感に抗う何かがあるような気がして、それを求めてえづくが、漏れ出てくるのはその毒に染まり切った吐息だけ。
わあ、いっぱい来た。
すんすん。うん。いい香り。すっかり女の子から牝にスイッチしてるときの匂いだ。
甘くて美味し。
その汁を顔に浴びたリグル達は満足そうにそれを指で掬って口へ運び、舌舐めずって味わった。彼等の手は、私の局部へは一切触れていない。
はっ、はっ、ん、もっと、もっ!とぉ……
うわ言のように呟きながら、淫核への刺激をエスカレートする。絶頂で鋭敏化したそれは、刺激を二倍にすれば、快感を二乗で返す。
ぉっ……ぅ、ぁ、ひ
絶頂を求め、それを必死にたぐり寄せるように、肉芽を潰し、こね、摘む。
くり、くりちゃん、イイのぉ……くりオナきもぢいっ
目の前にある目なんてどうでもよかった。リグルが私の醜態を見て何を言おうと思おうと、関係がない。ただそこを触って、性欲の求めるところへ行けるのなら、どうでもよかった。
お姉さん、えろーい
そんな風に陰部を必死になって弄くり回すなんて、浅ましいにも程がありますわ
……淫乱
口々に私を耳から辱める言葉を紡ぎ出すリグル。それでも構わずにクリトリスを刺激し続ける。
と、一度離された腕が再びからめ取られる。左右から成熟した女性の姿をしたリグル、男女どちらなのかわからない中性的な顔立ちのリグルが私の腕を押さえつけ、そのままの姿勢で私の耳に舌を差し入れてくる。
わざと唾液を注ぎ入れるようなその口と舌。耳の中でぐちゅぐちゅという音が、正に、響きわたる。普段人に触られることのない場所を襲う滑りと淫音。脳味噌を左右から溶かして行く。
ちょっと急ぎすぎ
もっとゆっくり楽しまないとダメよ?
耳の中から唾液の糸が引き、途切れて耳たぶや肩に滴る。
うにゃ、ん……ゅ
左右から私を煮崩して行く快感。しかしそれ以上の刺激を求めて左右の手はばたばたと暴れている。
おまんこ、おみゃんこおお
解れて淫らな泥沼と化したヴァギナを、しかし腕を封じられて触ることが出来ない。クリトリスに触れない……!
お嬢さん、暴れないの
わ、ちょ、そんなに手まんこしたいの?
したいっ!オナニー、マンズリしたいのっ!触らせて、させて!マンコ、てまんちょさせてええええっ!
必死だった。それに触れないのが恐ろしく空虚。寂寥感と不満感がむずむずと股間から全身にかけて這い回っている。
違うだろ?あんたが触りたいのは、まんこはまんこでも
脇から顔を出したポニーテールを揺らしたリグルが、私の頬に口づけながら、臍へ、そしてその下へと指をおろして行く。
これ、だろっ?
ん、っ!ひいいいいいいいいいいぁぁああああああっ!!
その手がクリトリスを、ぎゅう、と、まるでそれをねじ切るつもりかと言うくらいの力で摘み上げる。包皮の上からだと言うのに、その刺激は、思い切り振ったビールの泡が頭を割って溢れるくらいに快感へ化けてあふれ出した。
不意打ちの一撃を食らい、一瞬で絶頂。
い、ひぃっ……くり、くりとりしゅう……
あまりの絶頂具合に、視界がぐりんと反転した。まるで指がつった時みたいだ。そんな方へ曲げようなんて思っていない指が、勝手にその痛い方へ曲がろうとするあの感じで、目玉が勝手に上の方へ向いていて戻らない。対称的に、顔の他の部分は力を入れようとしてもだらしなく弛緩して、鼻水や涙や涎を止めるダムも決壊していた。ただこぼれるままにこぼれ、力の入らぬ顎はだらりとはみ出た舌を最早納める意志さえない。
びくっ、びくっ、とカラダは絶頂の余韻に痙攣するが、やはり他は完全にとろけていた。
おほぉあぁっ……くぃ、くぃろりひゅ、きもひぃにょぉおぉ
どのリグルに向けて訴えているのかさえわからない。むしろどのリグルに言っても、リグルとは全一の存在であるが故、関係のないことだが、そんなことは今の私には考えられない。
快感の臨海をあっさりと突破した私は、しかしそれでも深い快感を欲して、手を股間へ向かわせようとしてしまう。
こんなになってもまだオナりたいの?正直引いちゃうわ
オナニーしたい!ん、でもなんか違う。思い切りクリトリスでアクメしまくりたいのは間違いないんだけど、とにかくクリトリスを刺激したい。摘んで転がして捻って弾いて引っ張って押し潰して。
言葉に出来ていなかった感覚を、やっと近似した言葉に直して口に出す。即ち。
らって、らっておまんこぉ!クリ、痒い、痒いのぉ!クリトリス掻きたい!痒いの我慢できないのお!むずむずして、うずうずして、触ってないと狂っちゃうのおおおお!
掻痒。その言葉がぴったり合致するわけではなかったが、もっとも近い気がした。触りたくて触りたくてたまらない。強く鋭い刺激を与えて欲しくて与えたくて、そしてそうしないと狂ってしまいそうなほど。
へに……?
最初に、ヴァギナ全体に塗りたくられた、彼の唾液……。
虫刺され、したことあるでしょ?あんな感じ。
たまらないでしょ?痒くて痒くて、でも掻いたらイっちゃうんだ。掻けば掻くほどアクメって、毒が回って腫れ上がる。そしてもっと痒くなって、イきまくっちゃう。
そんで、あたいらは甘い水にいっぱいありつけるってワケ
催淫成分と、催痒成分。
吸血性の生物が、血液の凝固を遅らせる成分を使って血を吸うのと、同じだ。止まらない。
痒い、痒いようっ!掻かせて!クリ引掻かせてえええっ!
それは異常な欲求。その根源は性欲じゃない。掻痒感という強すぎる欲求が、しかして強すぎる性感につながるのだ。
むず痒さを主張し続けるクリトリスを、包皮の上から爪を立ててかりかりと刺激する。たまらない。痒いのを我慢し続け、やっと指が届いたときのえもいわれぬ安堵感と充足感。そして更に、そこから爆ぜる強烈な快感。
しゅ、ごひ……クリトリスぎもぢいぃいいいいいいぃいっ!!
眼筋は制御を取り戻したが、結局見ているのは一点だけ。催痒薬に冒されて痒みを発し、それを掻いて腫れ上がるクリトリス。痛みはなく、更なる痒みと強烈な快感だけを生み出すそれを、私の目は凝視していた。
淫蜜に濡れたそれは未だ包皮に包まれ、その中でにゅるにゅると躍っている。爪を立てて得られる刺激と、粘液で緩くなった包皮との摩擦で、真っ赤に充血した牝肉芽の先端はぷりぷりとその存在感を増していく。
かわっ、かわかむりクリっ!まっかになってゆ、きもちくておっきしてるう!
両手の人差し指と親指で、皮の上から四方向包み込むように抑えて硬くしこったクリトリスを上下にズリ擦る。
いひぁ……くりっ、くりきもちひクリしごききもいひのおおぉぉ
私を取り囲み、絡め取り、視姦し、煽るリグルたちの中で、私は腰と背を弓なりに反らせてびくびく痙攣しながら、なおも淫突起を弄る手を止められない。
クリ痒い、クリ痒いのぉっ!ぐりゅぐりゅすると、きもひぃ、くりカキきもひいいいぃぃいっぃ!!
休む間もなくクリオナニーを続ける。痒くて痒くてたまらないのだ。でも、包皮を剥いて本当に欲しい刺激を与えることには恐怖があった。今でさえこんな、前身がぐずぐず煮え腐るような快感が絶え間なく湧き出すというのに、クリ肉を直に触って、爪で引掻いたりしたら。
普通は痛いに決まっている。だが、今の私は、きっと……。
すごーい。こんなにいっぱい溢れてくるなんて。久方ぶりのいい湧き水だね
いくら噴いても質が落ちないな。それどころかどんどん淫臭と粘り気がまして、甘みも強くなってる。
リグル達は私の淫裂に舌をあて、唇を寄せ、際限なく湧き出る私の愛液を啜っている。時折ぴゅっと跳ねて太腿につくそれも、しっかりと舐め取っていった。
ざらついた彼等の舌は、私の淫唇を容赦なく舐り上げる。熱を孕んで敏感になった肌をねっとりと愛撫してゆく。尻の穴にまで垂れた牝蜜を、その窄まりをほじるように舐め取ってゆく。
らめ、そんな、そんなユルい刺激じゃたりない、もっと痒くなっちゃうのおお!もっと強く、強くしてよお!!
舌や唇で与えられる生易しい刺激は、催痒液の効果を徒に強めるだけだ。
陰唇のこそばゆさを埋めるように、クリトリスへの刺激を強めていく。顔を出した先端を指の腹で押し込んだり、皮で包まれた側面に爪を立てたりしながら、心なしかさっきよりも大きく膨れた肉芽を刺激する。
はっ、ひっ、イく、しゅぐイくっ!イってもイっても、すぐまたイけちゃうのおおぉおおおぉお!
リグルたちに『甘い水』を振る舞いながら、淫核自慰で存分に登り詰める充足感。法悦。
だがその反面、持続し続けている掻痒感は、私を絶頂の波から降りることを許してくれなかった。手を止めた途端に襲い掛かる強烈な痒み。一瞬だってガマンできずに刺激を送ると、間もなくオーガズムに襲われる。それで脱力して手を休めるとまた襲い来る痒み。
それを何度も繰り返すうちに、イくことそのものが辛くなってくる。アクメする度に一気に疲労感が溜まり、脳みそは空っぽに解放されて快楽経験値が少し累積。そしてそれを絶え間なく絶え間なく、延々と繰り返さなければならない。
はっ、あ、えぅ……クリ、かゅぃ……でも、もうイきたくなひ……つか、れた、あたまぼうっとして、なにもかんがえれなくて……っ!んぅっ!あああああでも!でもだめへえ!!痒い、かゆいのおお!クリトリスかゆいいいいっっっ!かいたら、掻いたらまた、またいっひゃう!!いったらまた、またあたまぐちゃぐちゃになって、つか、れひぇ……おっおぁっ!れもぎもぢいいいいいいっ!クリ、クリきもぢいのおおおおぉお!!
いよいよまともな制御が出来なくなり、最後の一線で避けていた、『皮剥き』をしてしまう。しようと思ったんじゃない。疲労で手元をうまくコントロールできずに、不意に剥いてしまって、そして剥き出しになった快楽神経の塊を思い切り刺激してしまう。
ひっ!ぎいいいいいぃいいぃぃいぃいぃぃいぃいい!?む、むげぢゃ、むげぢゃっらあああぉあおおおあおああぉぁぉあぉあお!!ぎもぢ、ぎもぢよしゅぎへ、しぬ、わらし、しんぢゃうのおおおおおおおっ!!
爆発する快感は、言語化も数値化も出来ない。ただイく。頭の上半分が吹き飛ぶくらいに強烈で鮮やかな色彩を描いて、ひたすら絶頂へ。降りられない。このアクメの波は、収まることを知らないのだ。
そして、しかしなおもって手を止められない。イくのは地獄の快感。イかぬも地獄の掻痒。包皮の防御をといたそれを、滅茶苦茶に弄繰り回し、連続絶頂の果てに追い込まれてしまう。
あ、あは……クリ、はれちゃってりゅ……はれあがっひぇ、でかクリになっひゃってゆ……おおあっ、しゅ、ご、いぃぃおっきくなって、おっきすぎて、扱けちゃうにょおおおぉぉお!!
刺激を受けるたび奇妙な形へ腫れ膨れ上がってゆくクリトリス。最早自分の体とは思えないくらいに巨大なものになっていた。手の親指よりも太くて長い。それは、まさにそれを髣髴とさせる形、大きさ。
ふふっ、すっかりおちんちんになったね
お姉さん、適正高かったんだね。あんなにヨがっちゃって、それにこれも、すっごくいい出来
ささ、あとは私達の水飲み場になってくれればいいからね
私の狂いオナニーを眼前で見ていたリグルたちが、満足そうに私の変形クリトリスを見ていた。彼等、彼女等の顔は、噴いて飛んだ、もしくは自ら口付け頬擦ったために、私の淫汁でべとべとに汚れている。
はーい、よくできました。オナニーはそこまでです
可愛かったわよ、あなたのクリオナニー
二人のリグルが再び私の腕を絡め取り、肥大化したクリトリスを扱く手を離す。
や、やあ!クリ、クリもっとしたいの!イきたくないけど、かゆ、かゆくてっ!!クリもっとしたいのおおおお!!
腕をしっかりと絡め取られた私は、少しでもクリトリスに刺激が欲しくて、必死に腰を振る。肥大化して天を突くクリを振って、空気の流れを当てて。それさえも気持ちが良くて、でも足りない。全然足りない。
やーらし。必死に腰振っちゃって。
誰か、水飲みたい人いない?
すっかりと顔を牝汁塗れにして満足そうなリグルが問いかけると、もう一人が歩み寄ってきた。
飲みたい飲みたい。ボクもう喉カラカラだよ
そういって、私の股の間に入り込んでくる。ガマンできないでいる私は、それでもへこへこと腰を振って巨クリへの刺激を求めている。
わわ、お姉さん、腰止めてようっ。お水飲めないよぉ
股の間の少年リグルが、腰を止められない私を前にして困っていた。
いいんじゃない?無理やりひっつかんで止めちゃえば?
どうせこの様子じゃ綺麗になんて飲めないよ、この淫乱肉じゃ。
ん。そっか。
彼は、徐に手を伸ばすと、私の肥大化クリトリスをぎゅう、と握りつぶして、それをそのまま引っ張って私の腰を口元へ寄せようとした。
―炸裂。
ぎゃひいいいいいいいいいいいいぃいぃいいいいぃいいぃぃ!!い、いひっ、ひっぱっちゃぁ、ひっぱっちゃらめへえええええ!!にゅけりゅ、くりちゃんぬけちゃうのおおおおお!!あああぁあぁぁあああああぁ、ぁ、ひ……ぉ……ぉあ
うわ、鬼畜w
可愛い顔して、結構やるわねえ~
ぶしゃ、ぶしゃ、と愛液が飛ぶ。彼はそれに口をつけて美味しそうに舌で転がしてから嚥下してゆく。
ん、おいしい。いくらでも飲めちゃうね
更に握りつぶした長クリを、淫液のぬめりに任せて上下に扱き上げる。
はああああああんうおぁああああっっっ!クリだめえっ!そんな、そんなふうにいぢめたら、しごかれたらああああ!!
イっちゃう?うん。いっぱいイってね、水飲み場は素直にエロ蜜出してればいいんだよ?おねーさん。
更にそれでは飽き足らず、長細いクリトリスを、扱きたてながらその中ほどで無理やり折り曲げようとする。
ぎゃ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ああああああアアああアああ!!!!だめ、らめええええええええええええええええっ!!つよっ、つよしゅぎゆううううううううううううぅぅぅぁああああ!!
ぐにゃり、無理やりにへし折られた肥大化肉芽。その折り目から爆発して広がる殺人的快感。
イグ、いぐぅっ!!しょんなにしたら、いったままもどれにゃくなっひゃうううううう!
白目を剥いて泡を噴いて、全てを包み込むクリアクメに打ち震える私を、リグルはニヤニヤ笑いながら見つめている。淫液を飲み下して、ぺろりと舌を出すその表情は、嗜虐的でさえあった。
お姉さんのくりちんぽ、すごいね。ほんとの男でもこんなことされたらイけないよ?
らって、らってクリ、痒くて、かゆくひぇ、痛くされても、ぜんぶ、じぇんぶ気持ちいい、きもぢいのおおぉぉおおおっ!!
クリ、クリ痒いの、痒いのお……っ。飲んで、のんでえ!誰か、私のエロまんこからまん汁飲んで!クリチンポひねって、マン汁の蛇口にしてええ!!
次のリグルが水を飲みに来るまで狂いそうな痒みに耐え、誰かが飲みにこれば狂いそうな連続絶頂に酔いしれる。
その頃になると、さっき私のマン汁を舐めていたリグルたちが、互いに愛撫しあって、やがてセックスを始めていた。
左右で私の腕を取っていたリグルも、私を蜘蛛の糸のようなもので固定して、セックスに耽っている。私は、うまく身動きが出来ないままに、切なく身をよじって、激しく淫汁を噴出し、蛍達の乱交パーティを目の当たりにする。
おちんちん、いれたいようっ、いれたいようっ
やん、がっつかないで。おまんこ、ちゃんとつかわせたげるから
緑の髪と触覚がぴこぴこ揺れて、同じく緑のロングヘアのリグルの股を割っている。雄リグルは先走りを零すペニスを立てて、牝リグルに挿入をせがんでいた。
あのエロ水飲んだから、私もすっかり準備完了だから、ほら
いれるよっ、おちんちんいれるよっ!いっぱいいっぱい射精するから、元気なタマゴ産んでね
ええ、暴れん坊ザーメンいっぱい注いで、妊娠させてね
二人のリグルの腰の辺りは、緑色に光っている。その腰を、ずん、と押し入れると、組み敷かれた牝リグルが一瞬で絶頂した。
あ、あへ……い、いれられただけで、い、イっちゃったのぉ……しゅご、牝殺しちんぽ、熱すぎて、すぐイかされ……んひっ!!
かわいいっ、アヘ顔かわいいよっ!見てるだけで、見てるだけでボクもぉっ!
雄リグルが腰をいっそう激しく振って、やがて一番深く挿入した姿勢のまま、ぶるっっと体を震わせる。
あ、ああ、で、るぅっ……
触覚がぴん、と伸びて、震えた。
あん、うっ!いっぱ、ぃ、いっぱい、でてりゅ……活きのいいザー汁、受精準備完了まんこに、どぷどぷでてるうううっ!!
牝リグルの方も、中出しされて絶頂をさらに押し上げられ、ふるふると痙攣していた。
受精、じゅせえ完了しひゃった……いっぱいにんしんしたあぁああ……
そんな光景が全ての蛍の間で繰り広げられ、まさに乱交状態。時折喉が渇くと私のまんこから水を飲んで更に交尾に耽ってゆく。
ぁぅ……くり、くり、シてぇ……みんあ、わらしをほっといて、ひどいようっ!!痒いクリ、巨大化してちんちんみたいになったでかクリ、痒いの、痒いのおぉ!
掻痒と幾らかの寂しさを感じながら、私が情けない声を上げていると、さっき私の水を飲んで行った男の子のリグルがまた飲みに来た。
お姉さん、どう?
飲んで、飲んでってえっ!マン汁、ガマンしすぎて真っ白になったマン汁、飲んでって!でかクリ扱いてイかせてええ
……ボクのでよかったら、使う?
可愛らしい子だった。男の子で、おちんちんがぴこぴこしているのに、顔立ちは全く女の子。細い手足、薄い胸板、少し浮いた肋骨、くびれたウェスト。体つきも、胸が無い以外は女の子そのもの。
つかう、って
こういう、こと、だよ
彼は私に馬乗りになって、勃起クリを股の間へ。そして。
んっ
え、ええっ!?あ、あああっ!!
みり、みりと、私のでかクリが彼のお尻の穴の奥へ入っていった。
は、はいっちゃった……お姉さんのクリちんぽ、ボクのけつまんこにはいっちゃったよっ
んひ!あ、ああっっ!けちゅ、けちゅまんこ、きもちいいっ!けちゅまんこにクリちんぽ入れるの、きもちいいいのおおおおっ!!
手で扱かれていたときと違う。ぬめぬめの粘膜にぬっぷり包まれて、ゆっくり上下に擦られる快感。
リグルくんのけつまんこ、きもちいいっ、くりちんぽ扱かれて、きもちいいのっ!
はっ、はひっ!おっきぃ、おねーさんのメスちんぽ、おっきいよう!お尻、お尻の中じゅぶじゅぶ入ってきて、奥のほうまで、ずんずんされるの、きもちいいいいいいっっ!!
リグルくんが私のちんぽをぱっくり銜え込んだまま、けつ穴セックスに声を上げている。その辺でセックスに耽っている牝リグルとなんら変わらないくらい可愛いアヘ顔で、ケツ穴セックスに耽っていた。
きゅっきゅしちゃ、きゅっきゅしちゃらめぇ!ケツ穴締めて私の牝ちんぽいじめるの、らめええええええええええええっえ!!
アヌスの窄まりが強い刺激となって痒みを満足させる。その奥の腸粘膜が、性感を満足させる。
おねえさん、おねえさんっ!ボクのケツまんこ、きもちいいっ?ねえ?ぼく、ぼくっ、きもちいよっ、お尻の奥におねえさんのおちんちんきて、おなかぐりぐりされて、きもちいいよおっ!!
へっあひ、ちんぽ、くりちんぽとけちゃうっ、リグルくんのケツ穴、熱くてぬめぬめして、でもぎゅうううっって締まって、いいっ、くりちんぽいっちゃうそうっ!
彼が、自分のペニスを掴んで扱き始めた
。私のクリトリスにお知りを貫かれて、ペニスを自分で扱いてオナニーして。かわいい
ぽつりと思わず零した言葉に、彼は真っ赤になって喰いかかった。
なっ、お、おねえさんだって、おまんこ全然挿入されてないのに、クリトリスだけでよがり狂って、可愛いんだからっ!
そういってお尻をぎゅっと締めたまま、上下にゆすり始める。
やっ!し、締めたまま動いたら!!んひっ!きもよくて、ダメなの、くりちんぽぎゅってされたら、すぐきちゃう、すぐきちゃうからぁああっ!
ん、ひう!お尻、えぐられへ、ちんぽとまんこと両方、りょうほうっ、すごい、しゅごいよおおっ!!
リグルくん、おちんちんイきそう?おちんぽ汁、欲しいの。おまんこの奥、もう、子宮おりてきて、お口もぱっくりしちゃってて、ほしがってるの……イくときは、膣内に、膣内に欲しいのっ!!
私が懇願すると、彼の腰がいっそう強く、そして肉棒を扱く手の動きも激しくなって、絶頂が近いことを示していた。
あ、あああぁっ!ひ、ぁ!!クリ、くりしゅごいっ、いっちゃう、いちゃうにょおお!!
手コキではない刺激で、クリアクメを迎える。それと同時に彼がお尻から私のクリペニスを引き抜いて、、肉棒を強く扱いたままそれを私の股の間に添えて……
こぉら
んひゃ!?
そこはあんたのそれを入れるところじゃないだろう?
スタイルがすらっと綺麗で淫らなほど女性らしいラインで髪をポニーテールに結わえたリグルが、私とセックスしようとしていた雄リグルを蹴り飛ばす。
い、いたたっ!
んもう。人間の女相手になにやってるんだ。そんなだったら私が貰ったげるよ……
彼女は彼の目の前で陰毛の濃い性器を指で広げる。途端にどろっと白い精液がワレメから溢れ出して、既にその中が精液タンクになっていることを現していた。
もう、五人分くらい入ってるまんこでよければ、キミのも頂戴?
あ、はっ、はっ、いれるっ、だすっ!
わわ!ちょっと、逃げやしないって
私の目の前で、二人のリグルが腰を突き合ってセックスを始めた。さっきまで私の目の前でかわいい顔をしていた彼が、あっさりと寝取られてしまったことに、どこかでぞくぞくと快感を感じていた。
んっ……うぅっ!
お、おい、もう終わりかぁ?……まあ、そこ人間と出来上がってたんじゃ仕方ないか。
胸の中で果てた雄リグルを、優しく抱いている牝リグル。
突き入れられたままのペニスと、その端から入りきらない精液をどろどろと零すヴァギナ。
二人の交尾を見ていて、私はまた昂ぶってしまう。
んうう……ひどい、よう……私も仲間にいれてよぅっ!クリ痒くてしかたないのおおぉおぉん
切なく啼いた私へ、彼女が歩み寄ってくる。そしてほっそりと綺麗な手で私の額を撫でながら、優しく囁いた。
安心しな。あんたはこれから、この夜の主賓として、最高に輝くんだ。
……へ?
私が意味がわからずにきょとんとしていると、さっきまで乱交に耽っていたリグルたちが一箇所に集まってくる。彼等、彼女等は、再び蛍の姿へ戻り、それが無数に集まって黒い塊となる。
がさがさ
硬い甲虫の表面が擦れ合う音が響いている。小さな虫の無数の集合ゆえに、表面が流動するように見える。それが徐々に大きく、そして高さを持って、そしてやがて人の形に似た塊へ。
その蛍達が光を放ち、黒い塊は黄緑色の光に包まれ、そして。
それは一人の少女の姿になっていた。ショートボブに、少しボーイッシュな顔立ち。女としては少し物足りないラインだが、そのスレンダーさはエキゾチックな魅力に溢れている。
そして何より目を引くのは、その膨れたお腹だった。
あなたが……本当のリグル……
いいや。さっきまでの私達も、今のこの私も、リグルだよ。
今までのどのリグルよりも気品に満ちて、存在感がある。
―女王―
彼女を見た俊かに浮かんだのは、まさにその言葉だった。
人里では招かれざる客。でも今宵、私達の主賓として。今ならまだ間に合うよ。さあ、どっちを選ぶ?
最初に、言った筈……。私は帰る気なんか、無いって
ありがとう、私を選んでくれて
彼女が手を上げると、私を絡め取っていた蜘蛛巣が解けて消えた。体の自由が利く。今なら好きなようにクリトリスを扱きたてられるが、そんな気は消え去っていた。いつの間にかそれは元の大きさに戻っており、痒みも消えている。彼女が、そうしたのだろうか。
私は、貴方を殺すことになる
……そんな気がしていたわ
一歩、一歩と私に近づいてくるリグル。私はそれから逃げも退きもせず、ただ真っ直ぐに彼女の目を見ていた。
そして、手が届く距離。彼女は私の頬に手を伸ばし、そのまま頭を抱いて、その胸へ私を導いた。
私の子供を、産んでほしいの
ええ。うみたいわ、貴方の子供
見た目は向こう側にいた頃の私よりも幼いリグルだが、こちらに来て若返った私の体は、彼女に抱かれて包まれてしまうほどに小さい。すっかりと彼女に抱擁されて、でも私の気持ちは酷く安らいだものだった。
ここ、赤ちゃんがいるの?
卵。これを貴方の中に、植えつけるわ。中から貴方の命を食い尽くす。だから生まれるのも一瞬よ。
酷くグロテスクな話だというのに、私は全く抵抗を感じなかった。いっそこれが今から私の中に入ってくるのだと思うと、愛おしささえ感じる。
リグルの膨らんだお腹の中には、さっき乱交して受精した卵がびっしりと詰まっているのだ。それをお腹の上から撫でると、何故か暖かいような気がした。
痛くは無いから、安心して
痛くても、平気。
彼女の体に、自分の体を全て預ける。
こんな世界、いやだって思ってた。どこかに消えたいって。自分は無価値な存在だって、実際にはどうなのかはわからないけど、周りからそう言い続けられたら、そうだと思っちゃうじゃない。
……そうだね
「そんな私が、『消えちゃいたい願望』かなえつつ、母親になってちゃんと自分の価値を残せるなんて。……そんなの、幸せ」いろいろとぶちまけたい感情もあったけれど、要約して、そして彼女にぶつけられる感情は、それだけだった。それを伝えてから、リグルの卵、産んで、と小さくお願いする。
ニーナ
リグルは小さく私の名前を呼んで口付けてくれた。暖かい。
彼女は私を横たえて、自身は膝立ちになる。そして少し眉を顰めたと思うと、彼女のヴァギナが開いて細長い管のようなものが現れた。
産卵管だ。すぐにそうだとわかった。あれで私のおなかの中に、卵を植えつけるんだ。
恐怖は無かった。むしろ期待感で胸が張り裂けそう。早く、早くリグルの卵、頂戴。
私は覆いかぶさってくるリグルに腕を回して、抱き寄せた。愛おしい。リグルが、リグルの子供が、愛おしい。
入れるよ
うん
ぬるりと、抵抗なく産卵管が私のヴァギナを割ってきた。催痒成分は消え去ったらしいが、催淫成分はまだ強烈に残っているようで、凹凸の少ない産卵管が膣に侵入してくるだけでも、強烈な快感を生み出した。
あっ!ん、入ってくる……リグルの、はいってくるっっ!
痛く、ない?
痛くなんてないっ!気持ちいい、産卵管突っ込まれて、イっちゃいそうなほど気持ちいいのっ!!
抱き寄せた彼女の口に唇を押し付けて、唾液を交わす。
だっ、ダメだよ、今の私の唾液は、催淫……
だって、気持ちよくなりたいもん。もっと、リグルと一緒にいられるの、最後だと思ったら、セックスじゃなくても、もっとセックスみたいに気持ちよくなりたいもん
そういうと、彼女は唇を私に預け、唾液を注いでくれた。
体が、熱くなる。産卵管を差し込まれている淫裂が、熱を帯びてきゅうっと締まる。愛液が量を増して、彼女の手が体のどこかを撫でるだけでびくびくと体が震えた。
すごい、よっ!産卵管突っ込まれてるだけなのに、イっ!っちゃ!いっちゃ、うぅっ!!
大した摩擦も無いというのに、私は果てた。リグルもそれに応えてくれるように、産卵管をゆっくりと急がずに挿入してくれる。
大丈夫?辛くない?
はっ、はあっ、ぜんぜん、平気っ!でも、でもっ
ん?
またすぐイっちゃうそう
彼女は優しく笑ってまたキスをしてくれた。産卵管が、いよいよ一番奥へ到達する。
そしてリグルは私の最奥を、一気に貫いた。
はっ!ひゃぇあああああああああっ!奥、おぐっぅ!おまんこの奥、子宮のお口、貫かれ、あいちゃった、あいちゃったよおおおおお!
硬く窄まっていたはずの子宮口がずぼっと口を開けてリグルの産卵管を受け止める。
は、っ、入ったよ、ニーナの中、産卵管入ったっ。卵、植え付けるから、ね
う、んっ、うんっ
膣道で、子宮の中で、産卵管がぐぐっと太くなり、そして。
お、おあああっん、んんんんんっ!
私の子宮へ卵が送り込まれてきた。ぼこん、ぼこんと一つ一つが鶏の卵くらいの大きさもあるそれが子宮口を押し広げて侵入してくる。それが膣道を通り抜け、子宮口を抜ける度、私は軽いアクメに達してだらしのない声を上げてしまう。
やがて卵が子宮を埋め尽くしたが、リグルは産卵を止めない。彼女も産卵の快感に打ち震えながら、私の中へまだどんどん卵を送り込んでくる。
リグルのお腹がそうだったみたいに、私のお腹が卵で膨れ上がるんだ。ぼってりお腹になって動けないまんま、私は孵化したリグルの赤ちゃんに内側から……
想像するだけでイきそうだった。
きてる、リグルの卵、いっぱいきてるうううっ
子宮の内側でさえ性感帯と化している私は、卵がごろごろと子宮でせめぎ合う感覚だけでも簡単にオーガズムに達した。
ひゅごい……産卵されて、アクメってりゅうぅ
もうすこし、だからっ
私に卵を植え付けているリグルの方も、一つ産み落とす度に小さく震えていた。彼女も産卵でイってるらしい。
お腹はもう立派に妊婦と言えるくらいにまで膨れ上がっていた。ぎゅうぎゅうに詰まったその卵が転がり子宮壁を擦る度に、また絶頂する。
股の間の粘膜は、既に何をされても一瞬でオーガズムへ達するように出来上がっていた。
んっ、んううううううっ!
リグルが一際高い声を上げると、最後の一つが私の中に送り込まれて、逃げるように産卵管が抜ける。そのままそれはリグルの膣の中へ戻ったが、その瞬間彼女も大きなアクメを迎えたらしく、私の上で顔を伏せたままびくっびくっと痙攣していた。胸の辺りに液体の感触を感じるのは、きっと彼女の涎だろう。
はー、はーっ、っっは
す、ごいっ……!こん、なに、いっぱい
私のお腹の中、リグルの下で、苗床たる私に着床した卵は、急速に成長を始める。
こ、これからっ
軽くアクメ顔のままのリグルが、弱弱しく顔を上げて、私に告げる。
これからこの子達は、すぐに孵化する。幼虫は一気に貴方の生命力を食らい、そして
私は死ぬのね
彼女は小さく頷いた。
悲壮感はない。未練がないのだから当たり前だ。そんなことよりも待ち遠しかった。リグルの赤ちゃんが私の中から生まれてくることが。
私は自分のお腹に手を置いてゆっくりと目を瞑り、今まさに胚から急激に分化を始めているだろう我が子を慈しんだ。
……私に食べられるのを、そこまで真っ直ぐに受け入れた人間は初めてだよ
あら。光栄だわ。
そんなに生きてるのが嫌だったの?
生きてることじゃないわ。私という存在が残っているのが嫌なの。現存在であっても誰かの記憶の中であっても、たとえその一片でもね
小さな沈黙。そして。
でも、今はちょっと未練があるわ
えっ
この子達の行く末がわからないのが、ちょっとだけ、悔しいかな。他は、後悔なんてない。本当、私には勿体ないくらいの最期だわ。ありがとう
ありがとうは、こっちの……
と、彼女が言葉を紡いでいる最中に、来た。お腹の中が、蠢いている。あちこちで弾けるような感覚と、何かが動き回る感触。孵化だ。
見てわかるくらいにお腹に凹凸が生まれ、それがぼこぼこと動いている。右へ左へ上へ下へ孵化してから行き場のない幼虫が暴れている。そのたびに、お腹の中でぶちぶちと嫌な音が響いている。膨れ上がったおなかも、張り詰めた皮膚と肉がいつ破裂するかわからない。下腹部はには既に激痛が走っていた。
間もなく私は食われるのだろう、自ら生んだ子供達に。
産まれるわ
神経毒を
感覚を歪ませる成分で、出産の激痛を和らげようと進言するリグルだが、私はそれを断った。
要らない。痛みを、この子達を、感じたいの
最期の最後まで、私は幸福感に包まれていた。
こうなった事に、後悔なんて一片たりともない。むしろ、あるのは優越感。蟲達の母として選ばれたという優越感が全てを支配し、逆にそれまで私を不幸だと思わせてきた全てのものへの憎悪が、強く湧き上がった。
―私を呪った者達……呪われろ―勝利者は無垢なる人間達ではない、我々怪異を知る者だ
徐々に消えてゆく意識の中、私は、やっと苦しみから解放されたことに、生まれて初めての嬉し涙を流した。
朝になって、四人の子供達はようやく発見された。
しかし、それは既に『四人』ではなく、『元々四人だっただろうもの』へと、変わり果てた姿。
見上げれば崖。草木も生えぬ禿げた地面へは、落ちれば確かに人の身など肉塊に変わり果てるだろう。だが、そうだとわかっていても、その様は余りに不自然な。
細長く白い臓物が、落下して潰れるだけの物理作用の中で、どうして四本が四本とも絡み合うだろうか。肋骨らしき固いものは、蛇腹のように二対が噛み合っていた。髪の毛は長いも短いもなく、しかし毛糸の玉のように丸く結びついている。手足はばらばらに、しかし綺麗に一人ひとりのそれが順繰りに折り重なっていた。もはや誰のもの高さえわからない目玉は、一つも潰れることなく球体を維持し、七つ、一直線に並べられ。一つだけ、どこに行ったのかわからない。ただ潰れていたのかもしれない。
落下事故でこうなるわけが無い。そして人間のすることでも、ない。
そのように、四人の死体は余りにも無残な姿で発見されたというのに、招かれざる客―登川ニーナ―の姿は、全く見えない。死体も見つからない。
人は口々に、あの娘が持って行ったのだ、とそれを呪った。
だが、彼等は知らない。
蛍狩りをしたあの川を沿う山道を来た、草葉の隙間、露の陰。そこに彼女が持っていた提灯と、着ていたものだけが、目を覆うほど夥しい数の蛍の幼虫に抱かれていることを。
丸々と太ったその芋虫は、やがて再び妖の蛍を舞わせるのだろう。長い時間を生きて妖質を持った蟲は、妖怪に等しい。リグルと呼ばれる怪異の総体は、ときとして妖怪故に人を食い、種そのものを成長させてゆくのだ。
それは妖怪らしく、気紛れに相手の願いを叶えたりもするという。喰われたのは人を呪って生きた娘。だが、妖怪にはそれを叶えるか叶えぬべきかを判断する基準が無い。叶え方に、望む形も望まぬ形も無い。妖怪とは、人間の幸にも不幸にも、等しく残酷に平等で、同時に大雑把でいい加減。なればこそ、妖怪なのだ。
私も妖怪である以上、その食事についてとやかく言う立場には無い。だが私は、彼が人を食ったそれと同じように、登川ニーナの忌まわしい過去を食べておくことが出来たはずだった。
歴史から消えてしまいたい
そう口にした彼女のそれを、ぬるい正義感の元に食べずにおいたことも、今となっては後悔の種だった。
今夜は満月。もし運命が今日まで待ってくれたなら、もっと大きな歴史―例えばある少女にまつわる辛い過去の全て―を喰らうことが出来た。そうであれば、被害者は五分の一だったかも知れない。もしかしたら後悔を失った人間から、蟲は食欲を失ったかもしてない。しかし、そうはならなかった。
結果だけで言えばそうはならなかったというだけの話。不幸だったのは、リグル・ナイトバグに巻き込まれたのが、世を呪う人間だったというただその一点だけだろう。そしてその願いを叶えてしまったのも、気紛れで偶然。ならば、それも自然の摂理。同情の余地など無い。
今夜私に出来ることは、この里に稀人が流れ着いたという事実、凄惨な怪異事件の因果痕跡を、綺麗さっぱり平らげてしまうことだけ。残念だが、歴史にならぬ真実さえ食べ尽くすほど、私の顎は強靭ではない。
それに。
私のこの食欲とて、人間を救うためのものでもなければ、歴史を作り出すためのものでもない。そんなのは副産物、全き偶然に好ましい結果に過ぎない。
私のそれは、やはり、彼が人を食ったのと、同じなのだ。
こうなってしまったことは残念だが、私にはそれを防ぐ手立てを実行する気は無い。それはあざとく言うなれば、このような記憶に残したくない事件が起こる度に、私の食料庫が満たされてゆくから。とも、確かに言えた。
妖怪とは、どう転んでもかようなもの、か
赤く大きく丸い、幽かに映る山極へ滴りそうな、不吉の月を、ぼんやりと見上げながら、一人ごつ。
それが均衡、なのでしょう?
あの赤いものからやってきた、嘗ての怪異の元凶は、私を慰めるでもなく責めるでもなく。ただ小さく肩を叩いて立ち去った。
だが彼女たちもまた知らない。
そうして死んだ一人の少女は、その最期に全く悔いを残していなかったことを。今際の際まで、幸せに包まれていたことを。
天竺上がり、したれば、翼黒さへも撃ち墜とす。―